なぜ、今ジビエなのか?
近年、日本では山間部や多くの農村地域が鹿や猪の被害で悩まされています。
実はそこには日本が抱えた社会問題が見え隠れしています。近年の日本は人口が減り続けています。その影響は田舎ほど強く出ています。昭和までの里山の多くは農家の方々が少しでも田畑を広げたく山奥まで開拓し棚田や畑を作っていました。それが昨今、山々で暮らす農家の人が高齢になり田畑を守る人が居なくなり、田や畑には草が生え林になり森となって
広がっていて猪や鹿がテリトリーを広げ増えています。
また日本昔話でもよく出てくるオオカミの存在です。古来日本の食物連鎖の頂点には日本オオカミが居ましたが現在は絶滅しています。
人間が忌み嫌い絶滅させてしまった事が大きい理由の一つと考えられています。
(他にも狂犬病流行等諸説あり)
現在九州ではオオカミの代わりに食物連鎖の頂点は鹿や猪になり、人間が居なくなった里山を支配しているのが鹿や猪になりました。
鹿や猪はほぼ天敵が無くどんどん増えていき、林業では木の皮や新芽を食べられて木が枯れるようになり、農業では田畑の作物を食い荒らす被害が甚大で害獣として駆除されるようになりました。
大分県の調べでは適正頭数の約10倍は生息しているそうです。
大分県では捕獲した97%が殺処分され廃棄されていましたが、私たちが害獣から美味しいジビエ肉として変身させるべく日々奮闘しています。
ジビエ処理加工
猪処理
ジビエって本当に美味しいの!?
ジビエはとても美味しいですが残念ながら、はっきり言って臭く不味いジビエはあります。
猟師がよく100キロ位の大物の猪を捕獲して自慢していますが
ジビエとしては大体不味いです(笑)
ある処理施設では、新鮮で適切に処理すれば美味しい、うちで獲れたジビエは全部美味しいとか、嘘ばかりです。私たちに言わせてもらえば本当に美味しいジビエは半分位です。
また、美味しいジビエ、不味いジビエの理由はちゃんとあります。
ひとつは野獣と家畜との違いにあります。
家畜は人間が食べやすいように改良し管理された牛や豚等です。
家畜の豚の雄は生後2~3週目で去勢手術を受けます。
これにより、いわゆる豚の雄臭(アンドロステノン)の匂いが出ないようにしています。
また、年を取ると加齢臭も発生しますが豚は生後6~8カ月で出荷する為 加齢した個体が
存在しないので、家畜は加齢臭が無く美味しいです。
しかし、野獣の鹿や猪は去勢された個体は存在せず、加齢した個体は存在するために
半数近くのジビエが不味いとなるのです。
もうひとつは猟師と獣肉処理施設の問題です。
里山を守り素晴らしい猟師も沢山いますが、残念ながらそうでない猟師もいます。
処理施設を通さず猟師が直接ジビエ肉を販売するのは違法で闇ジビエになります。
これは無責任で一番怖い事です。青空や納屋で解体した不衛生な不味いジビエを売っていていつ食中毒等の事故が起きてもおかしくない状況です。
許認可も受けず、PL保険も加入せず、責任も取れない闇ジビエ商法が暗躍しているので、
いつか事故が起こり、ジビエ業界全体が巻添えにならないかを恐れています。
それと日本の処理施設の多くは猟師が運営し自分達が捕獲した鹿や猪を処理するためだけに作られた施設ですので、学校等で勉強した肉のプロがいないからです。
猟師さんたちは捕獲のプロであり、肉のプロではありません。
また、臭い肉や不味い肉は猟師や処理施設の人も分かってはいるものの、無駄にしたくないという考えから、そのまま売ってしまうことが多い。でも、それを食べた人は二度と食べてくれないですよね。ジビエを広めたいのならやってはいけないのです。
けれど、大切な命なので粗末にしたくなくて・・・悪く言えばパックにして冷凍すれば匂い等は分からないのでお金に換えるという悪循環です。
あとの半数の雌や若い雄のジビエは本当に美味しくいただけます。
美味しく食べるには厳しく選別することがとても重要です。
また、家畜の様にビタミン剤やホルモン剤、抗生物質を投与されていないので身体に優しく低アレルゲンで栄養も素晴らしい肉といえます。
ジビエはフランスで多くの料理人に高級食材として用いられています。
日本でもやっと認知されるようになりました。
鹿肉のロティ
選別して臭いジビエは捨てるの?
弊社では、人の口にそぐわない臭いジビエはペットフードにしています。
この事業を始める時に真っ先に取り組んだのが臭いジビエの行き先です。
結局廃棄すれば、元の木阿弥ですのでどうするか悩みました。
その時、当時まだ子供が幼児でしたので
大好きな動物を見にサファリパークによく通いました。
そこで猛獣の餌にしてはと考え、サファリの先生に相談したところジビエは栄養素が
素晴らしいので栄養補助として使いたいと言ってくださいまして、臭いジビエの行き先が
決まりました。
その活動が話題になりペットフード会社がドックフードやキャットフードで使いたいと
依頼があり販路が広がりました。
余談ですが、人間が食べない臭いジビエを愛しいペットにどうなの!?て思われますが
何度もテストしていまして、肉食動物にとって人が食べ難い臭いのあるジビエ肉は
むしろ好物で残さず全て食べています。
本当に有難きwin winです(笑)
ジビエは本当に安全か!?
TVで有名なレジェンド的な方が猟をして鹿の刺身を食べさせていました。
はっきり言ってありえません!ジビエ肉に限らず鶏肉も豚肉も刺身ではいただけません。
生肉には菌やウィルス、寄生虫がいる場合があります。
自然界のジビエ肉にも無論保有が確認されています。
何度も言いますが生食は絶対ダメです!
しかし、それは家畜の豚や鶏でも同じリスクはあります。
大分県の保健所調べでは、鹿より鶏の方が何倍も菌やウィルスを保有していました。
ちゃんと加熱し頂けば普通の豚肉や鶏肉同様の扱い方で十分です。
それと、なぜか多くの方々が捕獲後1時間以内のジビエは安全で大丈夫的な風潮ですが、
「仮に夏場、魚釣りに行って釣った魚を1時間放置し、氷やクーラーで冷やさず常温にさらした魚を食べられますか? って話です」
肉も同じで捕獲からの時間も当然ですが、温度コントロールが重要です。
夏場に1時間も放置したら腐敗が進み、菌が増殖しとても食べれません。
鮮度が悪ければ魚はヤバイけど、肉だから大丈夫的な考えの方もまだまだ多いです。
許認可を受け、複合的に正しい考え方を持ち衛生的な施設で初めて安全は
担保されるのです。
ちゃんとした処理施設のジビエ肉で、しっかり加熱して食べれば100%安心で安全と
言えます。
弊社では国産認証ジビエマニュアルを遵守しジビエ版トレーサビリティ管理を
行っています。
何時、どこで、誰が捕獲したか、個体の詳しい状態や、体重、雌雄、推定年齢等を
記録しデータ化しています。
鹿肉(熟成中)
栄養素は、凄いデータが出ている!
鹿肉は牛肉に比べると約エネルギーが2分の1、脂質が4分の1、鉄分は1.7倍。
猪肉は豚肉に比べると鉄分が4倍、ビタミンB12が3倍。
鹿肉には脳機能向上に効果があるとされるDHAや食べることでしか取り入れることが出来ないオメガ3・6、カルニチン、と脳に良いとされる成分が確認されています。
さらに抗酸化作用があり疲労回復効果がある渡り鳥やクジラに多く含まれているアンセリン、バレニン、カルノシンというイミダペプチドが確認されています。
これらは運動パフォーマンスを向上すると言われていて言わば天然のサプリです。
ジビエ肉はもはやスーパーフードと言っても過言ではありません。
(弊社商品はDHAやオメガ3・6を日本で初めてジビエ製品に表記しました)
ジビエ肉には女性や高齢者に必要なたんぱく質、ビタミン、鉄分等を多く含んでいます。
子供からお年寄りまで健康や脳にまで良いとされているのでおすすめです。
特に、これからダイエットしたい方やアスリートの方にもおすすめです!
最後にジビエに対する思い 願い!
先日、次男小学3年生の友達から「なんで可愛い鹿を殺すの?」と聞かれました!
ハッとしましたが、「それはね、農家のおじちゃんやおばちゃんが作った野菜や果物を鹿に食べられて農業を続けられなくなり苦しんでいるんよ オオカミが居なくなり鹿が増えすぎて農業の被害が酷いので猟師さんが捕獲しているけど、獲れた鹿は捨てているから、命をただ捨てるんじゃなく何とかしたいんよ!
鹿もジビエ肉にして食べてやれば本望と思うと思うし、大切な命のバトンだと思うよ!」と話したら
「そっか~じゃあ残さず食べんとね!」と言ってくれました。
その夜、子供たちに聞いたら他の友達からも同様な質問や意見をされるそうです。
ある意味、子供達も巻き込みジビエを推進しているので、へこたれるわけにはいかないのです。
常日頃学校や家では子供に、やれ食育だ、食べ物を粗末にするな、無駄にするな!と教育しています。しかし、身近で害獣とはいえ命を無駄に廃棄している事実があります。そこで、私たちがジビエという形に変えて命を粗末にせず、自然の恵みを大切にし、処理するからには全てを頂きたい。少子高齢化の現代だからこそ生命の元である食べ物を今一度考えてほしい。一人でも多くの皆様がジビエを食べて頂くことが里山を守り、命を無駄にしない活動になります。ジビエ版食のサステナブルな取組をして食料の安全確保と栄養状態の改善の一助となり持続可能な農林業を推進できます。
皆様から応援して頂き、一頭でも多くの害獣を旨いジビエに変身させ、命を大切に扱い無駄にしない。食を通じて社会貢献出来たら最高ですので、ご協力よろしくお願い致します。
安心院ソーセージ・宇佐ジビエファクトリー 山末成司
ジビエ加工商品